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清原氏は個人投資家に対して、「大型株のETF」投資と「割安な小型株」への投資の2本立てを勧めている。
私は日本株の大型株に投資するならTOPIXのETFが便利だと思っています。大型株は自分でリサーチしても得るものは少ないですからねえ。ETFに任せるのが合理的です。(P139より抜粋)
日経平均とTOPIXへの投資の違いについては以下のように説明する。
「実を言うとTOPIXでも日経225のインデックスファンド(ETF)でも大した違いがないと思うのですよ。でも日経225は最近人気になって株価が急騰している半導体製造装置株とかの比率も高いしなんとなく嫌ですね。日経225はかなりいびつな指数です。だからといってこの2の指数のリターンに大きな違いが出るということにはならないかもしれません」
清原氏が勧めるもう一つの「割安小型株」への投資については、著書にこう記されている。
大多数の投資家の判断に強いバイアスがかかっていれば投資のチャンスです。(中略)1980年代の日本の土地・株のバブルで一部の不動産会社はヤクザぐるみで「地上げ」をやっていたのでイメージが悪すぎ、今でもまだ中小不動産会社の株は強烈に割安です。
電子部品商社なんかも最近でこそ少し評価が上がりましたが、ずいぶんと割安な状況が続いていました。「物を作っておらず、卸として商品を横流ししているだけ」あるいは「売掛債権がいつか不良債権化して大赤字になるかもしれない」という評価だったのでしょうか。(P29より抜粋)
一方で、小型株でも注意するべき投資対象が割高な銘柄だ。清原氏はグロース市場を以下のように評する。
それではマザーズ市場、今でいうグロース市場はどうなのでしょうか? マザーズ市場は1999年11月の設立以来、一度も割安になったことはありません。中身が冴えない割には高PER銘柄が多く、最悪の市場です。赤字のバイオ株など、見る価値のない株が多すぎます。
(中略)もちろん成長株もあるでしょうが、数からいうと「成長するはずが成長できなかった会社」が圧倒的に多いと思います。しかもそれが「成長株であるかのように」高いPERになっていて。(P146~147より抜粋)
「日本は沈みゆく国です。だからといって株価が上がらないわけではありません。1980年代後半、日本がバブルに突入したとき、ものすごい高揚感がありました。企業経営者は浮かれて無駄な投資をたくさんしたのです。
今はそれとは逆に『将来が暗い』ために企業経営者は慎重です。これは株式市場にとって素晴らしいことです。無駄な投資もなく自己株買いで株式の需給もますますよくなりそうです。日本の経営者は株主のことを考えるようになりました。
日本の株式相場は急速に上げてきましたので下げる可能性は十分にあります。一番危ないのは半導体製造装置株です。これから何年か業績は上向くかもしれませんが装置ですからねえ。波があるわけですよ。いつかド減益になるのは間違いないでしょう。そうすれば株価は半値になるかもしれません。気を付けてください。
今、はやりのAIなんかも危ないテーマですねえ。私は生成AIとかかなり限定的な使われ方にとどまると思います。半導体をたくさん作って動かせば電力を大量に消費しますからねえ。環境に悪いわけですよ。
メタバースも流行は一瞬でしたでしょ。生成AIとかも騒ぎすぎだと思いますよ。私はグーグルの検索がもうちょっと使いやすくなれば十分ですけど。このように明らかに割高な株やセクターはありますけど、株式市場全体で見るとまだバブルというにはほど遠い状態だと思います」
日経平均株価が34年ぶりに史上最高値を更新するなど、足元では追い風が吹く株式市場。ただ過去20年超を振り返れば、ITバブルの崩壊、リーマンショック、東日本大震災、コロナパンデミックなどさまざまな試練があった。
清原氏もリーマンショック時は、「病人がフラフラ歩いてたら車に連続3回ひかれたイメージ」と表現するほどの苦境に追い込まれる。著書では以下のような経験が明かされている。
このころ私は夢を見ます。私は死んで地獄に落ちていました。閻魔大王の前に連れていかれて「お前何か言いたいことはあるか?」と聞かれます。私は「これが私のポートフォリオです」と言って保有銘柄リストを閻魔大王に差し出しました。すると、「お前の運用はロング・ショート運用なんだろう? このリスト、ロングばっかりでショートがないじゃないか」と詰問されます。私は「まずいなあ」と思って下を向いて小さくうなずきました。閻魔大王はしばらく銘柄のリストを見ていました。そして私にこう告げます。「お前はまだ死ななくていい」。(P199より抜粋)
こうした苦境を乗り越え、清原氏が運用していた「KIファンド」の基準価額は1998年7月の100から2023年6月には9100にまで達した(下図参照)。